HSI JOURNAL
HEALTHY AGING SERIES / 03

年齢とともに、
眠りはどう変わる?

― 60代・70代・80代の
「よい眠り」を考える ―

FOR 60s / 70s / 80s

柔らかな朝の光が入る窓辺で、穏やかに朝を迎える女性のイラスト

「昔より眠れなくなった」と
感じていませんか?

  • 夜中に何度か目が覚める
  • 以前より朝早く目が覚める
  • 長く寝たはずなのに、すっきりしない
  • 昼間に眠くなることがある

若い頃と眠り方が変わり、「年齢のせいだから仕方がない」と感じる方もいるかもしれません。たしかに、睡眠構造や体内時計には年齢とともに変化する傾向があります。一方で、眠りは加齢だけで決まるものではありません。

年齢を重ねると、睡眠にはどのような変化が起こるのでしょうか。

第3号では、眠る時間だけを切り取らず、朝から夜までの一日の過ごし方から睡眠を考えます。

01

年齢とともに、睡眠はどう変わる?

眠りには、浅い眠りから深い眠りまでいくつかの段階があり、ひと晩の中で行き来しています。研究では、年齢を重ねるにつれて、深いノンレム睡眠が少なくなる、夜間に目覚める回数が増える、寝床にいる時間のうち実際に眠っている割合(睡眠効率)が下がる、といった傾向が報告されています。睡眠のまとまりや総睡眠時間が変化する場合もあります。

睡眠が年齢とともに少しずつ変化し、個人差があることを表す柔らかな波の図

また、眠りと目覚めの時刻が早い側へ移り、夕方から早めに眠くなったり、朝早く目覚めたりする人もいます。しかし、すべての人に同じ変化が起こるわけではなく、変化の程度にも大きな個人差があります。

02

私たちの身体にある「体内時計」

私たちの身体には、眠る時間・目覚める時間をはじめ、体温やホルモン分泌など、一日のリズムを整える仕組みがあります。これが概日リズム(サーカディアンリズム)です。

朝、昼、夕方、夜、睡眠、朝へとめぐる24時間の体内時計

体内時計は、きっかり24時間の機械時計ではありません。周囲の明るさや生活時刻などの手がかりを受け取りながら、外の一日と歩調を合わせています。加齢に伴う生理的変化に加え、光を受ける時間、日中の活動、食事や人との交流なども一日のリズムに関わります。

03

「光」は、体内時計を整える
大切な手がかり

地球の明暗周期に体内時計を同調させるうえで、光は重要な環境の手がかりです。光の影響は、強さ、色、受ける時刻、長さ、そしてその人の状態によって異なります。そのため「朝日を何分浴びれば必ず眠れる」とは言えません。

朝の自然光が体内時計を介して睡眠と覚醒のリズムにつながる図

それでも、朝から日中に光を受け、夜は明るすぎる光を控えるという明暗のメリハリは、体内時計が環境の一日を読み取る助けになります。窓辺で朝を迎えたり、体調に合わせて屋外へ出たりすることは、暮らしのリズムを整える選択肢の一つです。

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04

身体を動かすことと、眠りの関係

高齢者を対象としたシステマティックレビューやメタ解析では、運動・身体活動プログラムが、主観的な睡眠の質など複数の睡眠指標を改善する可能性が報告されています。内容には、ウォーキングなどの有酸素運動、筋力トレーニング、心身運動、それらを組み合わせたプログラムなどが含まれます。

ただし、研究ごとに参加者、運動内容、期間、睡眠の評価方法は異なります。運動すれば必ず不眠症が治る、という意味ではありません。日中に身体を動かすことを、一日のリズムと健康を支える習慣の一つとして考えてみましょう。

朝の光、歩く、身体を動かして筋力を守ること、夜の休息へとつながるHealthy Aging Seriesの図

朝の光、歩くこと、筋力を守ること、そして眠ること。これらは独立した健康法ではなく、同じ一日の中で互いにつながる生活習慣です。

05

「よく眠る」ために、
日中からできること

01

朝から日中の光

カーテンを開け、無理のない範囲で自然光を暮らしに取り入れる。

02

日中の活動

体調に合った歩行や運動、家事などで身体を動かす。

03

生活のリズム

起床・食事・就床の時刻を、日によって大きく崩しすぎない。

04

夜の光

就寝前は照明や画面の明るさを控えめにし、静かな時間をつくる。

05

寝室環境

音、光、温度、寝具を見直し、安全で落ち着ける環境に整える。

06

嗜好品を知る

カフェインは眠りを妨げることがあり、アルコールは寝ついても後半の睡眠を乱すことがある。

どれか一つが万能な方法ではありません。自分の体調や暮らしに合うものを、小さく試していくことが大切です。

朝の光、日中の活動、人との交流、夕方、静かな夜、睡眠へと続く一日

06

「眠れない」を、
年齢だけのせいにしない

睡眠の変化をすべて加齢として片づけると、治療や支援につながる機会を逃すことがあります。次のようなことがある場合は、自己診断をせず、かかりつけ医や睡眠を扱う医療機関への相談を検討してください。

  • 強いいびきが続く
  • 睡眠中の呼吸停止を指摘された
  • 日中の強い眠気がある
  • 不眠が長期間続いている
  • 夜間に脚の不快感がある
  • 痛みなどで眠れない
  • 睡眠の問題で日常生活に支障が出ている

転倒につながりそうな眠気や、運転中の眠気がある場合も、安全を優先して早めに相談しましょう。

よい眠りは、「夜」だけで
つくられるものではありません。

朝、光を感じる。
身体を動かす。
人と会う。
食事をする。
そして夜を迎える。

眠りは、一日の生活から切り離されたものではありません。朝の光も、歩いた道も、誰かと交わした言葉も、静かな夜へと続いています。

今日の朝から、明日の眠りを少しずつ整えてみませんか。

参考文献

  1. Pappas JA, Miner B. Sleep Deficiency in the Elderly. Sleep Medicine Clinics. 2024;19(4):593–606. doi: 10.1016/j.jsmc.2024.07.007.
  2. Fank F, Pereira FDS, Dos Santos L, de Mello MT, Mazo GZ. Effects of Exercise on Sleep in Older Adults: An Overview of Systematic Reviews and Meta-Analyses. Journal of Aging and Physical Activity. 2022;30(6):1101–1117. doi: 10.1123/japa.2021-0444.
  3. Vanderlinden J, Boen F, van Uffelen JGZ. Effects of physical activity programs on sleep outcomes in older adults: a systematic review. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2020;17:11. doi: 10.1186/s12966-020-0913-3.
  4. Duffy JF, Zitting KM, Chinoy ED. Aging and Circadian Rhythms. Sleep Medicine Clinics. 2015;10(4):423–434. doi: 10.1016/j.jsmc.2015.08.002.
  5. Duffy JF, Wright KP Jr. Entrainment of the human circadian system by light. Journal of Biological Rhythms. 2005;20(4):326–338. doi: 10.1177/0748730405277983.
  6. National Institute on Aging. Sleep and Older Adults. U.S. National Institutes of Health. 公式資料.