HiSAY JOURNAL
HEALTHY AGING SERIES / 06
健康・予防 | Healthy Aging
腸を整えると、
毎日が変わる?
― 腸内環境と健康長寿の深い関係 ―
FOR 60s / 70s / 80s & COMMUNITY

INTRODUCTION
腸は、毎日の健康を支える
小さな世界。
私たちの腸内には、多様な微生物が暮らしています。その集まりは腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう/gut microbiota)と呼ばれる、複雑な生態系です。
腸内環境は消化だけの話ではありません。代謝、免疫、腸の内側を守るバリアなど、身体のさまざまな働きとの関連が研究されています。近年は、腸内環境とHealthy Aging(健康長寿)という視点からの研究も進んでいます。
食事や生活習慣、住む環境、健康状態は人それぞれです。だからこそ、毎日の暮らしの中で腸内環境を考えることには、前向きな意味があります。
01
年齢とともに腸内環境は
どう変わる?
加齢に伴い、腸内細菌叢の構成や、つくり出す物質の傾向に変化がみられることがあります。ただし、「高齢になると必ず腸内環境が悪くなる」ということではありません。研究でも、年齢だけでは説明できない大きな個人差が報告されています。
食事の内容、身体活動、服用する薬、病気、生活環境、居住環境など、多くの要因が関わります。一人の腸内細菌を「よい」「悪い」と単純に分けるよりも、多様な要素が関わる全体像として見ることが大切です。
02
腸と健康長寿は、
どのようにつながっている?
腸内細菌叢は、免疫機能、慢性的な低度炎症、代謝、腸管バリアとの関係が研究されています。また、フレイル、筋肉、脳・認知機能との関連を調べる研究もあります。
バリア代謝筋肉・
フレイル脳・認知
機能
これは「腸だけの問題」ではなく、全身とのつながりが研究されている、ということです。一方で、人を対象にした研究には観察研究も多く、腸内環境の違いが原因なのか、健康状態や生活習慣の結果なのかを一つずつ分けて考える必要があります。関連が報告されていることと、因果関係が確立したことは同じではありません。
03
注目される「短鎖脂肪酸」とは?
野菜、豆類、全粒穀物、海藻などに含まれる食物繊維の一部は、消化されずに大腸まで届きます。そこで腸内細菌が利用・発酵する過程で、酪酸、酢酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)が生まれます。
全粒穀物→腸内細菌の
はたらき→短鎖脂肪酸
酪酸・酢酸・プロピオン酸→腸管バリア・
免疫・代謝
短鎖脂肪酸は腸の細胞のエネルギー源の一つになり、腸管バリア、免疫、代謝との関係が研究されています。ただし、短鎖脂肪酸を増やせば病気が治る、という意味ではありません。食事、体調、薬剤などを含めた生活全体の中で、研究が積み重ねられている段階です。
04
腸が喜ぶ食生活とは?
「この食品だけを食べればよい」という答えはありません。大切にしたいのは、食事全体の多様性です。いろいろな植物性食品を楽しむことは、食物繊維やそのほかの成分を食卓に招く、無理のない方法の一つです。
05
60代・70代・80代から始める
「腸活」5つの習慣
少しずつ、種類を増やす
野菜、豆、海藻、きのこを、いつもの料理に一品ずつ。
食物繊維を意識する
主食、主菜、副菜を組み合わせ、一日全体で考えます。
発酵食品を無理なく
好みや体調に合わせ、日々の食生活の中で楽しみます。
適度に身体を動かす
散歩など、続けやすい活動を暮らしに取り入れます。
眠りと生活リズムも大切に
食事だけに頼らず、毎日のリズムを整える視点を持ちます。
06
腸活は「一人の健康」から
「地域の健康」へ
健康長寿を、個人の努力だけに任せることはできません。食べること、動くこと、人と会うことを支える環境があってこそ、日々の選択は続けやすくなります。
自治体の健康づくり、企業の健康経営、学校での食育、医療による予防と栄養の支援、地域で人がつながる場。こうした取り組みは、世代を超えた健康リテラシーを育みます。一人ひとりの健康から、横浜の健康な未来へ。それがHiSAYの考えるHealthy Agingです。
A SMALL STEP, A BRIGHTER FUTURE
腸を整えることは、
特別なことではありません。
今日の食事に野菜を一品加える。少し歩いてみる。よく眠る。誰かと楽しく食卓を囲む。そんな小さな習慣の積み重ねが、これからの健康を考える第一歩になります。
60代からでも。70代からでも。80代からでも。
健康づくりに「もう遅い」はありません。
今日からできる小さな一歩を、未来の自分のために。そして、一人ひとりの健康から、横浜の健康な未来へ。
HiSAY
Health Science Alliance Yokohama
参考文献・参考資料
- Kim S, Jazwinski SM. The Gut Microbiota and Healthy Aging: A Mini-Review. Gerontology. 2018;64(6):513–520. PubMed.
- Ghosh TS, et al. The gut microbiome as a modulator of healthy ageing. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2022;19:565–584. PubMed.
- Badal VD, et al. The Gut Microbiome, Aging, and Longevity: A Systematic Review. Nutrients. 2020;12:3759. PubMed.
- Wen NN, et al. Gut microbiota changes associated with frailty in older adults: A systematic review. World J Clin Cases. 2024;12:6815–6825. PubMed.
- Liu X, et al. The interaction among gut microbes, the intestinal barrier and short chain fatty acids. Animal Nutrition. 2021;9:159–174. PubMed.
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). 公式資料.
