HSI JOURNAL
HEALTHY AGING SERIES / 05

年齢を重ねた身体に必要な
「食べる力」

― 筋力と健康を守る、毎日の食事を考える ―

FOR 60s / 70s / 80s & FAMILY

光の入る食卓で彩り豊かな食事を楽しむ60代から70代の男女

最近、食事の量が
少し減っていませんか?

一度に食べられる量が減った朝食を飲み物だけで済ませる肉や魚の回数が少なくなった一人分の調理が負担になった体重が少しずつ減っている疲れやすく、立ち上がりにくい

年齢を重ねると、食欲や食事量、買い物や調理のしやすさが変わることがあります。

「食べる量が減ったことを、
単に年齢のせいにしていませんか?」

変化の背景は、体格、活動量、病気、薬、口の状態や暮らしによって一人ひとり異なります。意図しない体重減少や食欲不振が続くときは、医療・栄養の専門職に相談することも大切です。

01

「食べる力」とは、
何でしょうか?

「食べる力」は食欲の強さだけではありません。食べ物を選び、用意し、噛んで飲み込み、必要な量を味わい、誰かと食卓を囲みながら食生活を続ける――暮らし全体の力です。

食べる力 → 身体をつくる → 動く力を支える → 外出する → 人とつながる
食事は、これからも自分らしく暮らすための大切な生活習慣です。

02

年齢を重ねると、なぜ
低栄養に注意が必要なの?

低栄養は、単に「痩せている」という意味ではありません。食欲や味・香りの感じ方、噛む・飲み込む力、病気や薬、気分、孤食、買い物や調理の負担、活動量などが重なると、必要なエネルギーや栄養素が不足することがあります。

食欲の変化食事量の減少孤食買い物・調理噛む・飲み込む味や香り病気・薬気分活動量

不足が続くと、体重減少、筋肉量や筋力の低下、疲れやすさにつながる可能性があります。ただし、体格だけで栄養状態は判断できません。「痩せている人だけの問題」と決めつけず、最近の変化にも目を向けましょう。

03

タンパク質は、身体の
何を支えているの?

タンパク質は筋肉だけでなく、臓器、皮膚、血液、酵素、免疫に関係する物質など、身体を構成し、働きを支える栄養素です。

RELATED / BLOG 02食事と一緒に考えたい「筋力」を守る習慣70代からでも筋肉は鍛えられる? →

04

タンパク質は、
何から取れる?

高価な健康食品や特別な食材がなくても、身近な食品から取り入れられます。

動物性と植物性のどちらか一方を優れていると決めつけず、体調、好み、食文化、噛みやすさ、調理のしやすさに合わせ、いろいろな食品を組み合わせましょう。

05

一度に頑張るより、
毎日の食事へ少しずつ

夕食だけに集中させず、朝・昼・夕それぞれにタンパク質を含む食品を無理なく加える考え方があります。必要な量は一人ひとり違うため、毎食一律の量を目標にする必要はありません。

完璧な献立より、いつもの食事に一品加える。
食欲が少ないときは、まず食べられる量から考えましょう。

06

タンパク質だけではなく、
エネルギーも大切

食事量が少なく、必要なエネルギーが不足しているときは、タンパク質だけに注目しても十分な栄養改善につながらないことがあります。

主食ご飯・パン・麺主菜魚・肉・卵・大豆副菜野菜・きのこ・海藻乳製品牛乳・ヨーグルト果物旬を楽しむ水分こまめに

すべてを毎食完璧に揃える必要はありません。一日全体、さらに日々の習慣として整えていくという柔軟な視点を持ちましょう。

07

食欲がない日にもできる、
小さな工夫

小分けにする

一度に食べにくい日は少量に分け、食べやすい時間帯を使う。

便利な食品を味方に

下ごしらえ済み、冷凍、缶詰、パック食品も塩分などに配慮して活用する。

楽しい食卓へ

家族や友人と食べる機会、彩りや器、好きな香りや味を取り入れる。

できたことを見る

食べられなかった量より、食べられたことを前向きに評価する。

08

「食べにくい」「体重が減った」を、
そのままにしない

  • 意図しない体重減少や食欲不振が続く
  • 食事中によくむせる、飲み込みにくい
  • 噛みにくい、歯や義歯に問題がある
  • 食事に極端に時間がかかる
  • 強い疲労感や筋力低下がある
  • 病気や治療の影響で食べられない

このようなときは、自己判断でタンパク質だけを増やさず、医師、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士などに相談しましょう。腎臓病など、タンパク質量の調整が必要な病気もあります。持病のある方や治療中の方は、主治医や管理栄養士にご確認ください。

食べることは、
未来をつくる楽しい時間。

明日の身体は、
今日の一口から。

健康のための食事は、我慢や制限だけではありません。好きなものを味わう。旬の食材を楽しむ。誰かと食卓を囲む。いつもの食事に一品加えてみる。

そんな小さな積み重ねが、これからも自分の足で歩き、行きたい場所へ行き、人や社会とつながり続ける身体を支えます。

未来の自分のために、今日の食事から
小さな一歩を始めてみませんか。

参考文献

  1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書. 公式資料.
  2. Volkert D, Beck AM, Cederholm T, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clinical Nutrition. 2022;41(4):958–989. doi:10.1016/j.clnu.2022.01.024.
  3. Bauer J, Biolo G, Cederholm T, et al. Evidence-based recommendations for optimal dietary protein intake in older people: a position paper from the PROT-AGE Study Group. Journal of the American Medical Directors Association. 2013;14(8):542–559. doi:10.1016/j.jamda.2013.05.021.
  4. Cruz-Jentoft AJ, Bahat G, Bauer J, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age and Ageing. 2019;48(1):16–31. doi:10.1093/ageing/afy169.