HiSAY JOURNAL
HEALTHY AGING SERIES / 07

脳は、何歳からでも
元気にできる?

― 動く・学ぶ・楽しむ・つながる。
毎日から始める脳の健康習慣 ―

FOR 60s / 70s / 80s & ALL GENERATIONS

大きな窓から緑を望む明るい室内で、世代を超えて卓球を楽しむ人々

これからの人生を、もっと楽しむために。脳を使うことは、難しい特別な訓練だけを意味しません。歩く。ボールを追う。音楽に合わせて動く。知らなかった言葉を覚える。誰かと話す。

心が少し弾む活動には、身体、考える力、好奇心、そして人とのつながりが自然に重なっています。自分らしい楽しみを見つけることから、脳と毎日の元気を育てていきましょう。

01

脳・認知機能とは、
毎日を味わうための力

認知機能には、注意を向ける、記憶する、言葉を理解する、考える、段取りを立てる、判断する、といった働きが含まれます。買い物の献立を考える、道順を選ぶ、友人との会話を楽しむ。こうした日々の営みの中で、私たちはたくさんの認知機能を使っています。

年齢を重ねても、学びや活動を通して新しい刺激を得ることはできます。大切なのは、点数や成果を競うことではなく、「楽しい」「またやりたい」と思える時間を暮らしに持つことです。

02

動くことは、脳にも届く
毎日のリズム

身体活動と認知機能の関係は、長期にわたる研究でも検討されています。身体活動量が多いことと、その後の認知機能の変化との関連を報告する研究がある一方、活動の内容や量、健康状態には個人差があります。WHOも、身体活動を健康づくりの大切な柱として位置づけています。

たとえばウォーキングは、足を動かすだけでなく、外の光、季節の変化、街の景色、人とのあいさつに出会える時間です。安全で歩きやすい場所を選び、体調に合わせて5分からでも。散歩の帰りに好きな店へ寄る、誰かと待ち合わせるなど、楽しみと結びつけると続けやすくなります。

03

卓球は、「見る・考える・動く」が
続いていくスポーツ

卓球では、飛んでくるボールを見て、方向や速さ、回転を捉え、相手の動きを予測し、次のプレーを考えながらラケットを動かします。一球ごとに、見る・予測する・判断する・動くという複数の働きが短い時間に連続します。

01見るボールと相手の動きを捉える
02考えるコースや返し方を選ぶ
03予測する次の一球に備える
04動く足と手を連動させる
05笑い合うラリーと会話を楽しむ

卓球を含むオープンスキルの運動や、複数の課題を組み合わせる活動については、認知機能・バランス・社会的な側面への可能性を調べる研究が進んでいます。近年のメタ解析では、卓球介入と認知・バランスの指標との関連が報告されていますが、研究の対象や方法には幅があります。地域の仲間や家族と、無理のないラリーから始める。そんな時間そのものが、身体と気持ちを動かすきっかけになります。

04

音楽、ダンス、楽器。
身体と脳を一緒に使う

ダンス

音楽を聴き、リズムを感じ、動きを覚え、身体を動かす。誰かと一緒に踊れば、笑顔や会話も生まれます。

楽器

楽譜を見て、音を聴き、指を動かし、曲を覚える。新しい一曲に挑戦する時間は、いくつもの感覚を使う学びです。

○●

囲碁・将棋

先を読み、選び、相手の考えにも触れる。静かな対局の中にも、考える楽しさと交流があります。

どれか一つが正解ということではありません。「あの曲が好き」「昔、少し弾いたことがある」「友人に誘われた」と感じるものを入口にして大丈夫です。

05

英語を始める日を、
年齢で決めなくていい

英語などの外国語学習では、新しい単語を覚え、音を聞き、意味を理解し、言いたいことを考え、言葉を探し、文章を組み立てます。実際に人と会話すれば、相手の表情を読み、伝わった喜びも味わえます。

60代から英語を始めてもいい。
70代から新しいことを学んでもいい。
80代でも、知的好奇心はこれからを照らしてくれる。

高齢期の外国語学習と認知機能については、実行可能性や学習の体験を含め、研究が続いています。効果を一律に語ることはできませんが、単語を一つ覚える、好きな歌詞を調べる、海外の人と短いあいさつを交わす――その一歩は、毎日の景色を少し広げてくれます。

06

人とつながることが、
暮らしの楽しみを増やす

地域活動やボランティアには、人と会う、会話する、役割を持つ、経験を生かすという魅力があります。社会参加と健康・ウェルビーイングの関係についても多くの研究が行われています。活動の形は、見守り、花壇の手入れ、読み聞かせ、スポーツの手伝い、地域行事などさまざまです。

経験を伝える教わる話す笑う地域に役立つ

若い世代や子どもと一緒に卓球をしたり、英語を練習したり、昔の遊びを伝えたり。世代間交流は、誰かが一方的に支える関係ではなく、互いに刺激を受け、学び合う時間になりえます。

07

今日からできる、
小さな「脳の健康習慣」

歩く

いつもの道に、一本だけ違う道を足してみる。

手を動かす

ボール、楽器、料理、手仕事。好きなことを続ける。

学ぶ

英単語を一つ、気になる言葉を一つ調べてみる。

会う

友人へ連絡する。地域の場をのぞいてみる。

大きく変える必要はありません。自分の体調、生活、好みに合わせて、「これならできそう」を選びましょう。運動を始める際に痛みや持病などの不安がある場合は、医療・運動の専門職に相談してください。

08

個人の楽しみを、
地域の力へ

脳の健康づくりは、個人の努力だけで完結するものではありません。歩きやすい道、立ち寄れる場所、世代を超えて学べる場、気軽に体を動かせる機会があれば、毎日の選択肢は広がります。

自治体・地域

健康づくり、生涯学習、居場所づくり、社会参加をつなぐ。

企業

健康経営と、経験ある人材が学び続けられる環境を育てる。

学校・医療

世代間交流、予防的な健康づくり、地域との連携を進める。

一人ひとりが生き生きと学び、動き、つながることは、地域の未来を明るくする力にもなります。

A JOYFUL NEXT STEP

これからも、動ける。
学べる。楽しめる。
人とつながれる。

年齢を重ねることは、可能性がなくなることではありません。新しいことを始める日も、好きだったことに戻る日も、誰かと笑う日も、これからの毎日にあります。

脳の健康づくりは、毎日の楽しみの中から。HiSAYは、科学的な知見を大切にしながら、健康長寿を地域の力へつなげていきます。

参考文献・公的資料

  1. World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. WHO公式資料
  2. Iso-Markku P, et al. Physical Activity and Cognitive Decline Among Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Network Open. 2024;7(2):e2354285. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.54285
  3. Li H, Ahn H, Shin M. Table Tennis as a Sustainable Health Intervention: A Meta-Analysis of Its Effects on Balance and Cognitive Functions. Healthcare. 2026;14(5):675. doi: 10.3390/healthcare14050675
  4. Kliesch M, Giroud N, Pfenninger SE, Meyer M. Research on Second Language Acquisition in Old Adulthood: What We Have and What We Need. Frontiers in Psychology. 2020;11:1107. doi: 10.3389/fpsyg.2020.01107
  5. 国立長寿医療研究センター. 認知症予防・健康長寿に関する情報. 公式サイト